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夏の暑さには心地よい、小雨が降る日でした。 予約時間に少し遅れてしまった私を、杖をついたご高齢の女性がニコニコと玄関先で待っていてくださいました。 新人だった私は、40、50分の道のりであまり会話もできずにいましたが、市内最大の霊園へ向かい、園内を傘を差してご一緒させていただきました。 墓前で何もせずに立っているだけというのも失礼と思い、お手伝いを申し出て手を合わせるところまで数分間、親族の墓と思いながら過ごしました。 「行きましょうか」と、お客様は私に笑顔を向けていて、つられて笑った私の顔に一瞬目を丸くしていました。 行きには聞かれなかった、私の年齢や家族のことなど質問責めにされながらご自宅へ向かい、玄関先では食べきれないからと和菓子をたくさんくださいました。 「ちょっと待ってくださる」と、思い出したように奥へ行き、写真を一枚持ってこられました。 なんとそこには私にそっくりな人が!? …というわけではないのだが、それはご夫婦の旅先での思い出の一枚でした。思い出話の後にお客様は、「交通事故で死んだらダメよ、奥さん悲しむからね」と涙目で言い、またニコッと笑いながらお別れしました。 その日の夜は、子どもの将来のことを考えながら、“絶対死ねない”と思いましたが、妻には今日の出来事を話さず、少しだけやさしくしておきました。 まだまだ経験も浅く、いろいろと足りないところもありますが、安全には常日頃気をつけながら運転しよう、と改めて思った日でした。 ちなみに私も笑うと糸目になります。

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